その深い漆黒の瞳に



私はまた、ひきつけられる。




「私、産むから・・女の子だったら、翼に似るでしょ・・」




一瞬、愛おしそうに笑った顔が



真顔に戻った・・





「ダメだよ。美緒。その子は産んじゃいけないんだ。俺と美緒とは兄妹・・」





「翼、違うの。


兄妹じゃ、なかったんだよ。私達・・血がつながってなかったんだ。」





翼にママから聞かされた話をした。





翼は驚いた表情も見せずにじっと私の話に耳を傾けている・・




「・・そっか・・だから、母さんは僕を愛さなかったんだね。」




翼は、やけに、冷静で・・




力なく笑うその顔は寂しさを隠せずにいたけれど、


その漆黒の瞳は、さっきよりも、少し、光を帯びている。


生きる希望を、見つけたあの時の私のような・・・





「美緒、俺は、後、何日生きるかも分からないんだよ・・それでもいいの?」





心配そうに私を見つめる瞳に




私は、心から微笑んだ。




「うん。だから、翼は一日でも長く生きて。」




「ああ」




「約束してね。」