石井ちゃん先生は、出産した翌々日に、赤ちゃんを亡くしていた。 先生自身も危険な状態になったらしい。 私はその4日後に生まれた。 先生と私のお母さんは病室で出会い、私もそこで先生と出会った。 そしてお母さんは、先生が胸にしまおうとしていた名前を、私へと繋いでくれたんだ。 皐月はその時、小さな私の手を握ったという。 なっちゃん、と呼び掛けたという。 そんなに幸せな記憶を覚えていないことが、すごく悔しい。