「でしょう?うちの実家は米どころだからね、自慢のお米よ」 「先生の実家、農家なの?」 「まあ、農家っちゃ農家ね。兼業だけど。うちの実家周辺じゃみんな米も野菜も作っているから、農家って言われてもピンとこないけど…」 石井ちゃん先生には、帰る家があって、自慢できる故郷があって、それはすごくすごく素敵なことだと思う。 私には無いけれど。 それを悲しいとは思わないけれど。 ガブリとおにぎりを頬張った先生の幸せそうな横顔は、少しだけ、お母さんに似ていた。