「早いね、礼生くん」 俺だって来たのは10分前だ。 でも。 「日和は何分待った?」 日和は困ったように笑ってから、うーんと唸った。 「ちょっと前だよ」 そう言って、左手で前髪を触る。 あ、嘘だ、と思った。 日和は、嘘を吐くときにそうする癖がある。 きっと日和は知らないだろう。 絶対に教えないと決めている。 「嘘だろ?」 そう言えば、なぜか落ち込んで。 「……30分前には着くようにって思って…」 つまり、俺より20分も多く待っていたのか。 はぁー、と思わず溜め息が零れた。