『誘った時の樋山の嬉しそうな顔を見たら、樋山も俺と同じように思ってくれてるんじゃないかって思えた。』

「あの時、…すごく嬉しかった。普段学校でしか会えない笠原くんと一緒に花火見られるなんて、夢だったから。」

小学校の時からだ。

毎年行ってる花火大会で、いつも笠原くんの姿を探した。

偶然ばったり会って、一緒に花火見られないかなって…。


「楓ー!」

階段の下からお母さんが私を呼ぶ声が聞こえる。

「笠原くん、ごめん。あの、お母さんにお風呂呼ばれちゃったから…。」

『そ、そうだよな。もう遅い時間だし…。』

「えっと、じゃあ、…おやすみなさい。」

なんて言って電話を切ればいいか分からなくて、ぎこちなくなってしまう。


『樋山っ』

そろそろ切らなきゃと思っていると、笠原くんのすこし焦った声がする。

「ど、どうしたの?」

『明後日の登校日、行くよな?』

「うん。」

『じゃあ、明後日な。』

「うん。おやすみ。」

切断ボタンを押すのは勿体ない気がしたけど、またすぐにお母さんに呼ばれそうな気がして電話を切った。