【短編】社長の秘書サマ





あぁ、もういっそのこと死んでしまいたいわ。


肩が凝る書類整理は嫌いなはずなのに、ついさきほどの自分が羨ましく感じる。


自嘲気味に笑うと、鏡の向こうの私の顔が醜く歪んだ。


うわ、不細工。


そう思ったのと同時に、チンと甲高い音を立ててエレベーターの扉が開いた。


あぁ。


とうとう着いてしまった。


エレベーターを降りると、そこにはもう一つのドアしか存在していない。


もう何度目になるかわからないため息を落とし、そのドアに向かって歩きだした。




「――――如月です」




三度上品にドアをノックし、そう告げると中から返事が返ってくる。




「入れ」




美しいテノールの声が鼓膜を震わし、私は腰がひける。