―――――その日の夜。
ポツンと薄暗い部屋に置かれたライトが、ベッドの上に絡み合う二つの影を照らし出していた。
「…どうして欲しい?伊緒」
私を組み敷いた創司さんが妖艶に微笑む。
ツッ…と頬を指先で撫でられ、私は熱い息を吐き出した。
「そ…ぅしさ……」
「伊緒」
あぁ、そんな声で呼ばないで。
「言ってごらん、伊緒」
フッと耳に吐息がかかり、堪らなくなった私は背中を反らした。
あぁ、もうダメ…
「伊緒」
目の前の首に腕を回し、その耳元に唇を寄せた。
微かな声でつぶやく私に、創司さんはゆるりと頬を緩めて、
「伊緒は欲がないな」
甘いテノールで囁く。
瞬間、私の目尻から涙がスッと流れ落ちた。