【短編】社長の秘書サマ





「これをつけたのはお前だ、伊緒」




頭の中が真っ白になる。


どういうことなのか、全く理解ができない。


そんな私を置いて、男は話を進める。




「昨夜お前は酒を飲むと、人が変わったみたいになってしまってな。“私のモノだ”と言ってつけられてしまった」




くすくすと小さく笑う男を見て、ぽかんと開いた口が塞がらない。


どういうこと…?


このキスマークは私がつけたの?




「信じられないか?」


「だ、だって…」




そんなの、覚えていないもの。


いきなりそう言われたって、何を信じればいいのか分からない。




「伊緒」




優しい声。


戸惑いに揺れていた瞳を、目の前の瞳に合わせる。


真っ黒な澄んだ瞳の中には、私。


私だけが、いた。