【短編】社長の秘書サマ





「じゃあっ!そのキスマークは!?誰がつけたって言うのよ…!」




ありえない。


この期に及んで、まだそんなことを?




「これのことか?」




そう言って見せ付けるように、シャツをずらした手の向こうに、小さな赤い印が見えた。


思わず顔を逸らしてしまう。




「お前の妄想力のたくましさには驚いた。せめて恋人どまりだろう?まさか婚約者とはな…」




笑う男を睨みつけ、グッと唇を噛んだ。




「伊緒。これは確かに俺の大切なヤツがつけたものだ」




あぁ。


もう嫌よ、聞きたくない。


耳を塞ごうとした私の手をするりと搦め捕り、男は指先にキスを落とした。




「なっ…!」


「伊緒。お前だよ」


「へっ…?」




私が…なに…?