【短編】社長の秘書サマ





「も、やめてください…っ」




なに、この羞恥プレイは…!


今の私の顔は、きっとゆでた蛸のように真っ赤。


ほろほろと涙が落ちる。




「…伊緒」




私の手を外し、男はまぶたの下にそっと触れた。


優しい手つきで涙を掬っていく。




「聞きなさい、伊緒」




嫌々をするように首を振る。


もうやだ…


最後なのに、そんな醜態を曝してしまっていたなんて…




「いいから聞くんだ。俺には婚約者などいない」


「……へ?」


「結婚する予定は、今のところはない」




な…にを言ってるの…?




「…ぅ、そ」


「嘘じゃない」


「嘘よ…!」




男の手を振り払う。


熱い涙が頬を伝う。