ただ…もし、この話が本当なら…
男は何とも言えない顔をして、私を見つめる。
「まさか…本当、なのですか?」
震える声で尋ねれば、男は微かに首を振った。
あぁ…っ。
何てこと…!
「も、申し訳ございません!」
「いや、いい。俺が止めなかったのが悪い」
「そんなことはございません…!すべては私の過失です」
どうしよう…!
全く記憶がないわ。
あわあわとあわてふためく私を見て、男は笑った。
「そうか。覚えていないか」
な、何…?
男の笑顔が嬉しそうに見えるなんて、私の目はおかしくなってしまったの?
いや、そんなことより…
「あ、あの…社長?」
「なんだ」
「全く記憶にないので、申し訳ないのですが…私、何か迷惑を…?」
この人の前で醜態を曝してしまったのではないかと、気が気ではない。

