【短編】社長の秘書サマ





そう言い聞かせて、真っすぐに男の目を見つめた。




「まず聞くが…昨夜のことを覚えているか?」


「…えぇ」




それはもう、鮮烈に残っている。


忘れたくても、忘れることなどできない。


ジリッと心が焦げる気がした。




「どこからだ」


「……?おっしゃっている意味が分からないのですが…」




どこから?


そんなの、昨夜は昨夜だもの。


どこも何も、あれがすべて。




「では質問を変える。酒を飲んだことは覚えているか?」


「お酒、ですか?」




私の言葉に男は目だけで頷く。


お酒?


あの苦手なお酒を?


私が飲んだ?




「…それはありえません、社長。恥ずかしい話、アルコールにはどうにも弱くて」




絶対にありえない。