【短編】社長の秘書サマ





『すみません、社長。ただ今書類を整理してい…』


『聞こえなかったのか。俺は今すぐと言っただろう』




えぇ、聞こえていましたも。


それはもうバッチリと。




『如月。これが最後だ。今すぐに来い』




端的に告げられた用件に、一秘書が拒否できるはずもない。


相手には聞こえないほどに小さくため息をついた。




『…かしこまりました』




そう私が言った時には、もう電話は切れてしまっていた。


カチャンと受話器を元に戻し、散らばっていた書類を丁寧に重ねた。




『…社長室に行って参ります』




部屋を出ていく際に一礼をすると、同僚から口々に了承の返答が返ってくる。


それをにこやかにやり過ごし、私は部屋を後にした。