【短編】社長の秘書サマ





「おい、い…」


「最後にひとつだけ」




男の言葉を遮り、私は言葉を押し切った。


そう、もうこれで最後。




「キスマークをつけるほどに、あなたを愛していらっしゃる婚約者様を、大切にして差し上げてください」




これで――――お別れ。




「式の日取りは折り返し連絡いたします。何せ今は忙しい時期でございますので」




泣くな。


泣くな。


泣くな…!


あともう少しだから。


我慢して……




「…改めて、ご結婚おめでとうございます」




―――あぁ、よく言ったわ。



もうあとは、この人に背を向けるだけ。