「おい、い…」 「最後にひとつだけ」 男の言葉を遮り、私は言葉を押し切った。 そう、もうこれで最後。 「キスマークをつけるほどに、あなたを愛していらっしゃる婚約者様を、大切にして差し上げてください」 これで――――お別れ。 「式の日取りは折り返し連絡いたします。何せ今は忙しい時期でございますので」 泣くな。 泣くな。 泣くな…! あともう少しだから。 我慢して…… 「…改めて、ご結婚おめでとうございます」 ―――あぁ、よく言ったわ。 もうあとは、この人に背を向けるだけ。