【短編】社長の秘書サマ





「結婚ですって?それは私の台詞よ!婚約者を悲しませるなんて、最低です…」




その言葉に、私の態度に呆気にとられていた男の顔が、微かに変わった。


眉を寄せるその姿に、私の心が張り裂けそうになる。


…ほら、やっぱり。


フッと笑い、話を続けた。




「……社長。あなたはとても魅力的な方です。男らしくて、仕事も出来る」




ネクタイを掴んでいた手を離し、そっと曲がってしまったネクタイを元に戻した。


何だか夫婦みたい。


そう考えて、私は心の中で自嘲気味に笑った。


まだ、諦めきれていないの?


もう叶わないのに。


……でも。


だからこそ。




「そんなあなたに、本気になってしまった女性もいるということを、覚えていてください」




私が“想っていた”ということを、伝えたかった―――…