「――――…によ」
「は?」
「〜〜〜ッ、何よ!」
ガッと男のネクタイを引っ張った。
前のめりになった男に、ぐいっと顔を近づける。
「まだ私をからかうつもり!?もういい加減にしてよ…!」
私の凄まじい剣幕に、驚いたように目を見開く男。
まだ。
まだよ。
こんなもんじゃ、収まらない。
「いつも気のあるようなことばっかりで、もう迷惑なんです…っ!もう嫌なの…!」
それでもやっぱり、頭の片隅に残された秘書としての私が、こんな状況でさえも秘書らしくあろうとする。
ネクタイに皺をつけないように、乱暴な言葉にならないように、すべての動作が私の怒りの表現を半減させる。

