【短編】社長の秘書サマ





本当に、可愛くないヤツだ。




『伊緒。俺を待たせた罰だ。お前からキスしろ』


『嫌です』


『お前に拒否権はない』


『そんな横暴な』




何がだ。


俺はため息をついたアイツの顎を掴み上げ、低く囁いた。




『――――早くしなさい、伊緒』




どれだけ待たせるつもりだ。


アイツは目をウロウロと動かすと、諦めたように顔を近づけてきた。


ふわりと柔らかいシャンプーの匂いがする。




『…目、閉じてください』


『ダメだ。ほら、早くしろ』




容赦なくそう言うと、アイツはやっと観念したようだ。


ゆっくりと顔を近づけてくる。