『―――如月さん、お電話です』
私に一本の電話を伝えるその声が響いたのは、ついさっきのこと。
書類を整理していた私は、つと顔を上げ、『ありがとう』とにこやかに返した。
…さて。
どうしよう。
ずっと光り続けているボタンを見つめ、私は思案した。
電話の相手など、聞くまでもない。
会社付きの電話、内線を使って連絡してくる人物は、ただ一人。
『…何かご用でしょうか、社長』
ここの一番お偉い、あの人しか。
『如月。今すぐ社長室に来い』
あぁ。
ついに来てしまった、恐れていた事態が。
消えかかった笑みをもう一度作り直し、やんわりと諭すように声を紡ぐ。

