【短編】社長の秘書サマ





「伊緒。それはどういう意味だ」




聞き捨てならない。


俺たちの間に何もなかったなんて、口が裂けても言えない。


そう、俺は思っていた。


だが…




「答えろ、伊緒」




コイツは違ったのか?


何とも思っていない、のか?




そもそも思い返してみれば、昨夜のアイツは様子が違っていた。


慣れない酒を飲み、いつもなら絶対にしないようなことを積極的にしてきた。



―――この首筋の印がそうだ。



普段はどんなに虐めてもしなかったのに。




『これは、“伊緒のモノ”っていう印なんですぅ〜』




甘えるように俺に絡みながら、頬をほんのりと染めたアイツは満足そうに自分のつけた印を撫でていた。


少々驚いたが、俺は嬉しかった。


もちろん、表情には出さなかったが。