……コイツは一体何を言ってる? 俺の腕の中で小さく肩を震わす女に、俺は眉を寄せた。 「伊緒?」 「大丈夫です。私たちは何もなかった。社長が心配なさるようなことはございません」 声を震わせながらつぶやくように話す内容に、俺の眉間の皺はより一層深くなった。 心配だと? 一体何の話だ? さっきから、 『邪魔をする気はない』だの。 『幸せになれ』だの。 訳が分からない。 ―――と、それよりも。 「…何もなかった、だと?」 いましがたコイツが発した言葉が引っ掛かる。