【短編】社長の秘書サマ





……コイツは一体何を言ってる?


俺の腕の中で小さく肩を震わす女に、俺は眉を寄せた。




「伊緒?」


「大丈夫です。私たちは何もなかった。社長が心配なさるようなことはございません」




声を震わせながらつぶやくように話す内容に、俺の眉間の皺はより一層深くなった。


心配だと?


一体何の話だ?


さっきから、


『邪魔をする気はない』だの。


『幸せになれ』だの。


訳が分からない。


―――と、それよりも。




「…何もなかった、だと?」




いましがたコイツが発した言葉が引っ掛かる。