愛されている、と。
そう、思い込むようになった。
気づいた時にはもう、引き返すことは出来なかった。
私はこの男に溺れていた。
―――そして。
私は現実を目の当たりにする。
私を覗き込む彼の首筋にある、絶対的な現実を。
私は自分自身の愚かさを呪い、自分自身の浅はかさを恥じた。
何も言わずに立ち去ろうとする私を、少し驚いたように目を細める彼。
『もう…あなたの玩具に成り下がるのは、堪えられない』
頬を伝う雫を感じながら、私は彼に言った。
そして、自分の心にその言葉を刻みつけた。
忘れないように。
思い出さないように。
ひび割れていく心に、私は何もすることが出来なかった。

