【短編】社長の秘書サマ





「離して…」




そんなの、嘘。


ほんとはずっと、抱きしめられていたい。




「しゃ、ちょぅ…」




最初から分かっていた。


叶わぬ想いだと。


だけど、抑えることなど出来なかった。


初めて抱かれた夜。


何度も何度も私の名を呼ぶ甘い声。


愛おしむように落とされる熱い視線。


この男のすべてが私を掻っ攫っていった。


体も、心も。


鮮やかずきる早業に、私はなす術もなくこの男の虜となった。


そして、いつしか私は傲慢になっていった。



―――恋は盲目。



これを恋と呼ぶのには、ふさわしくないかもしれない。


だけど、この体を突き上げる獰猛な感情は、確実に私を変えた。