「やめてください。今は仕事中です」
冷たくあしらうと、男は怪訝そうに眉を寄せた。
もう、やめて。
「おい、伊緒」
「用がないのなら、まだ仕事が残っておりますので」
これ以上、私を苦しめないで。
熱くなる瞳の奥を隠すように、まぶたを閉じた。
そう、私の気持ちを隠すみたいに。
「失礼いたします」
一礼し、背を向けた瞬間。
私の腕を男が掴んだ。
息が止まりそうになる。
「社長!離し……っひゃ!」
「伊緒」
振り払おうとした私よりも一瞬早く、男が私を引き寄せた。
バランスを崩した私は、なす術もなく男の胸の中に倒れ込む。

