【短編】社長の秘書サマ





「やめてください。今は仕事中です」




冷たくあしらうと、男は怪訝そうに眉を寄せた。


もう、やめて。





「おい、伊緒」


「用がないのなら、まだ仕事が残っておりますので」




これ以上、私を苦しめないで。


熱くなる瞳の奥を隠すように、まぶたを閉じた。


そう、私の気持ちを隠すみたいに。




「失礼いたします」




一礼し、背を向けた瞬間。


私の腕を男が掴んだ。


息が止まりそうになる。




「社長!離し……っひゃ!」


「伊緒」




振り払おうとした私よりも一瞬早く、男が私を引き寄せた。


バランスを崩した私は、なす術もなく男の胸の中に倒れ込む。