悩ましげに眉を寄せる私に、男はくすりと笑い、耳元で囁いた。
「呼びなさい、伊緒」
深く、甘い声に体の奥がジン…と痺れてしまう。
腰が疼く。
また。
また私は思い通りに…?
「――――そう…」
快感に負けて呼びそうになった私の目に、男の首筋が目に入った。
“それ”を見た瞬間、私を突き上げていた熱い衝動が引いていくのがわかった。
ゆっくりと正気に戻っていく。
「――――社長」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
肩を掴んでいた手を離し、代わりにゆっくりと肩を押し戻した。
「伊緒?」
不思議がるような男の声。
やめて。
呼ばないで。

