【短編】社長の秘書サマ





悩ましげに眉を寄せる私に、男はくすりと笑い、耳元で囁いた。




「呼びなさい、伊緒」




深く、甘い声に体の奥がジン…と痺れてしまう。


腰が疼く。


また。


また私は思い通りに…?




「――――そう…」




快感に負けて呼びそうになった私の目に、男の首筋が目に入った。


“それ”を見た瞬間、私を突き上げていた熱い衝動が引いていくのがわかった。


ゆっくりと正気に戻っていく。




「――――社長」




自分でも驚くほど冷たい声が出た。


肩を掴んでいた手を離し、代わりにゆっくりと肩を押し戻した。




「伊緒?」




不思議がるような男の声。


やめて。


呼ばないで。