「――――伊緒」
えっ…?
弾かれたように顔を上げれば、男は微かに笑った。
「伊緒」
「……っ…」
…卑怯よ。
私がそれに弱いのを知っているからって。
明らかに動揺する私を見下ろし、男は美しい笑みを浮かべる。
「伊緒。早く呼ぶんだ」
首筋に顔を埋めて、ツツッ…と舌で舐めあげられる。
ぞわりと体が震え、足から力が抜けそうになる。
何とかそれに堪えていると、今度は耳を甘く噛まれた。
「――――――ッ!」
出かかった悲鳴を飲み下す。
無意識に男の肩を掴んでいた。
あぁ。
いつのまに離されていたんだろう。
押し寄せてくる快感に眉を寄せ、私は熱い息を吐き出した。

