初夏に入ろうとしている頃。
うちとお舟は、家の中で、じっと座布団に腰をかけていた。
頭の中はボケーっとしていて、何も考えられない。
あれから1週間、ずっと店を閉めっきりだった。
ご飯を食べることを忘れて、働くことも忘れて、ただただ、じっとしているのだった。
「お琴ねーちゃん…」
久しぶりにお舟の声を聞く。
「なに…?」
「お店…店番せんでいいん?」
「………。」
やらなくていい、と言ったら嘘になる。
けど、働く勇気もない。
「お琴ねーちゃん!!」
「うち、知らん!!!!!」
つい、大声で怒鳴り立ててしまった。
お舟が涙をボロボロこぼして、叫ぶ。
「お琴ねーちゃん、このまま死んでもいいん!?舟はいやや!!」
「なら、自分でしたら?」
そう言って、お舟に背を向ける。
お舟の泣き声で、耳がちぎれそうだった。
「うわーん!!!!!お琴ねーちゃんの馬鹿ぁ!!!!!
おとっつぁんのお店を捨てる気なんや!!!!」
捨てる気……?
うちは捨てる気なんか1こも思ってない。
ただ、今はそんな気分じゃないだけ。
悲しさと、怒りが混じり合った感情…
よく分からんこの気持ち。
自分がよく分からん…。
