この壁の向こうで泣いている人がいる。


人間が壁をすり抜ける確率が、
ゼロではないと言うのなら、
僕にはこの壁をすり抜け、
泣き止ませる事はできないだろうか。



物は試しだ。


僕は一旦、寄りかかっていた壁から離れ、
助走をつけて、壁にぶつかってみた。


予想通りの音がして、
そして僕の体は壁に叩きつけられた。