夏とサイダーと500円玉【短編】

あたりを見回すとすでに坂の下の自販機を通り過ぎていて、後ろで夏乃が俺を呼んでいた。

「ぼーっとしてた」

昔は駄菓子屋だった空き地に自販機が2つ、ぽつんと立っている。

ポケットから出した500円玉はあの日握り締めていたものとは違って金色で。

俺と夏乃は小学生じゃなくて。

何もかもが違うように見えて、その中に変わらないものがあることに気がついて俺は煙草の自販機の方に入れかけた金色の500円玉をもう1つの方に投入した。