夏とサイダーと500円玉【短編】

しばらく無言で2人並んで歩く。

「ねえ、ジュース買って」

「はあ?」

唐突な夏乃のお願いに驚きの声を上げる。

「社会人なんだからそれくらいのお金あるでしょー?」

カラカラと笑いながら彼女は俺を見上げた。

暑いからジュースが欲しい。それはわかる。

しかし今の俺の所持金は500円硬貨1枚。

財布は実家に置いてきており、田舎故に目指す自販機から家までは遠い。