***
「リオネ…だったよな、なんか調子悪そうだけど」
「グルル…」
「そう、ケイから聞いたんだ」
低く唸る竜と、言葉を交わす少年。父親にしがみついていたケイは不思議そうに、その光景を見つめていた。
「本当に、リオネの言ってることがわかるんだ」
思わず口を開く。それを聞き捉えた彼の父親は、ケイの頭に手を乗せた。ケイが上目使いで父親を見る。
「不思議な子だよ。竜の言葉がわかるから、ゼルアは谷一番の竜騎士になれたのかもなぁ」
ケイは再び視線を戻す。視線の先には、リオネと会話するゼルア。ただ、その会話は一方的にゼルアが話しかけているのだが、確かに、リオネはゼルアに返事をしているようだった。
「…僕も」
「うん?」
「僕も、リオネとお話ししたい」
真っ直ぐにリオネを見つめるケイの視線に、彼の母親は微笑む。
「そうね、もう少し大きくなったらね」
彼女の言葉に、ケイは小さく頷いた。
すると
「へ!?マジでか!?」
ゼルアから突然奇声があがった。驚いたケイたちは、慌ててゼルアに駆け寄る。
「ど、どうしたゼルア!」
ケイの父親は思わず怒鳴り口調で話しかけてしまうが、そんなことを気にする余裕はなかった。他の二人も心配そうに、彼とリオネを交互に見つめる。
しかし、ゼルアはどこか呆れたような、困惑しているような表情をしていた。彼は髪の毛をかきながら立ち上がると、上着を脱ぎながらケイの父親に向き直った。
「おじさん、ちょっと手伝ってください」
.
