「リオネ…今朝から元気がなくて、ご飯も食べなくて…そ、それで、ゼルア兄ちゃんならわかるかもって、お父さんが…」
「なるほどな」
俺の槍、なおるまで暇だしな…
リオネの様子も気になるし
「…分かった、行くよ」
「ホント?!」
一瞬にしてケイの表情は明るくなる。目の前の小さな少年に頷くと、ケイはゼルアの腕を掴み、そのまま走り出した。
彼らが走り込んだのは、ケイの家が所有する竜小屋。布で仕切られた入り口を潜ると、ケイの両親が一匹の竜を必死に介抱しているのが視界に入る。駆け込んできた二人の存在にいち早く気づいたのは、ケイの父親だった。
「ゼルア!よかった、谷に居てくれて」
それにつられてケイの母親も話し出す。
「谷のお医者様は、今いらっしゃらなかったから…、ホントに助かるわ」
「買い被りすぎですよ、おじさん、おばさん」
ゼルアは中に進み、リオネの側に座り込む。
リオネは確かに呼吸も浅いし、ぐったりとした様子で藁の上に横たわっていた。
彼がそっと手をリオネの頭の上に置くと、うっすらと瞼が持ち上がった。
『誰…?』
ゼルアの姿を捉えたリオネは不安そうに呟き、身体を強ばらせる。それに対して、ゼルアは優しそうに微笑んだ。
「俺はゼルア。シゥの契約主だよ」
『…シゥの、契約主…あなたが…』
ゼルアは頷く。すると、強ばっていた身体がほぐれていくのを感じた。
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