***

「…それで、こんなひしゃげちゃったのかよ、あたいの自信作は」

「まぁ、そういうこ」

「ふ、ざけんなぁっ!!!!」

「んぎゃぁぁあっ!!」

***

―数時間前
海に面した草原の谷間に作られた村、竜の谷。ゼルアとシゥの故郷であり、契約された竜を始め、野生の竜もおとずれることがあるゼルアのような竜騎士の聖地とも言える場所である。
アカゲゾウを運び込んだ彼は、シゥを竜小屋に戻した後、気づいた。

愛用の槍の柄が曲がっていることに。

「あー…、意外と固かったからな…。修理に出さないと無理か?」

何度も角度を変えながら槍を見つめるが、本来真っ直ぐなはずの柄が曲がっているのは一目瞭然で。ゼルアは盛大なため息をついた。

「しょーがない、か…
…ぶっ殺されないかなぁ…俺…」

そして重い足取りで向かったのが村唯一の鍛冶屋。店主である少女に事情を説明し…そして冒頭に至る。

***

「あたいが精魂込めて作った自信作の緋色号を!雑に扱いやがって!それでもお前は竜騎士か!!村随一の狩人か!!?答えろこんのバカ!!」

店主の少女、ニケは大声をあげながらゼルアの首をグイグイと締め上げる。
…余談だが、緋色号とは無論ゼルアの槍のことである。

「ま、待てニケ…っ、ぐ、ぐるじっ、死ぬ…」

「問答無用!そのまま死ね!!」

「ぞ、ぞれはちょっと、ま、まず、ぃ…」

一瞬、お花畑ときれいな川を垣間見たゼルアであった。




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