そして彼は緋色の槍を突き刺した。突然の痛みに襲われたアカゲゾウは、痛みに驚き、背にいるゼルアを振り落とそうと暴れだす。

「うぉっ、暴れんなって!」

槍にしがみついてなんとか耐えるもののアカゲゾウの抵抗は増すばかりで、とうとう彼は上に投げ出されてしまった。しかし、今まで上空に待機していたらしいシゥに両肩を掴まれ、なんとか落下だけは免れていた。

「オー、危ない危ない。危うくペッシャンコになるとこだったな」

『一撃で仕留めんからだ、バカ』

「ハイハイ、どうせ俺はバカですよーっ、と」

軽く身を翻し、馴れた様子でシゥの背に乗りなおす。その間にも痛みに苦しみ、暴れまわるアカゲゾウ。その背には、彼が愛用している緋色の槍。ゼルアは一呼吸おくと、額のゴーグルを着けてから口を開いた。

「次で絶対仕留める。一回近づいてくれ」

『…分かった』

シゥは一度咆哮し大きく旋回すると、角度をつけて降下する。その勢いに任せ、ゼルアはシゥの首をしっかり掴みながら身をのりだし、槍をアカゲゾウの背から引き抜いた。と同時に、シゥは再び空へ上がる。ゼルアは目を閉じ、槍を持っていない左手を胸にあてると、ゆっくりと呟いた。

「"自然の恵みに感謝し、私は揺らぐ灯火に…"」

ゼルアは立ち上がると、そのままアカゲゾウに向かって飛び降りた。落下しながら槍を構える。再度、彼は呟くように口を開いた。

「"刃の風を吹き掛けます"」

緋色の槍はアカゲゾウの頭を貫いた。




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