そして、その日から毎日毎日
うちと秀の居残りは続き
体育祭前日になった。
いつものように葵君には
「先に戸締りして帰ってて」と伝え
秀と共にプログラムの最終確認などを行った。
そして、全ての仕事を終え
時間も7:30を回った頃…
「なぁ…蘭。」
帰る準備をしていた秀が不意に手を止めてこちらを見つめて来た。
「なに?」
そう聞き返す。
「蘭はさぁ、あの二年のことどう思ってんの?」
あの二年とは
たぶん、葵君の事だろう。
「どうって…。部活仲間?可愛い後輩くん。そんな感じだけど…?」
不覚にもドキドキさせられたことはあるが
好きとかそういう感情とは違うような…。
「そうか。まぁ…、いいけど。外も暗いし危ないから送って行こうか?」
秀が心配そうな顔で聞いて来る。
「いいよいいよ~!大体、うちみたいな子とか誰も相手しないから大丈夫!」
「そっか。じゃあ…気を付けて帰れよ。」
「うん、ありがと。」
そう言って秀は教室のドアを閉めようとした。
が、その手を止めて
「明日がんばろうなっ!」
優しい笑顔でそう言った。
その時、廊下で秀が
鈍感…。と呟いていたことを知らずに
うちも身支度を済ませて
すぐに教室を後にした。
