彼の名前を知るのは、簡単だった。


「お、翼じゃん。おはよー!」

朝のバスに響いた男子高校生の声が聞こえてきて、びくっと反応してしまう正直なわたしの身体。


いつも最初のバス停から3番目のバス停から乗っているわたしの定位置は、前から四列目の二人がけの座席の窓側。

わたしの隣に座っているのはいつ違う人だけれど、今日はOL風の綺麗なお姉さんだった。


わたしの乗るバス停から6個先のバス停になると、バスの座席はびっしり埋まってしまっていて。
ましてや通路も人ばかりだ。


そんな6個先から乗ってくる男の子に、わたしは恋をしている。