声のした方を向くと、そこには辰先輩の姿があった。


「……せん、ぱい…」

硬直するあたしに、


「なんだ、叶多か。誰かと思ったよ」

先輩は気付かない様子で、森川くんに近付いて行く。


「今何してんの?」

「見ればわかるだろ、辞書片付けてんだよ」

森川くんの顔から笑顔は消え、めんどくさそうな顔に変わる。


「おまえは片付けてないだろ」

そう言って笑う先輩の横顔に、あたしは目を反らせない。