でも、彰吾のその一言でわたしの心は、どうしようもない切なさに覆われた。


「そうだね。じゃあそうしてもらうから大丈夫。いろいろごめんね」

「じゃあ遅くならないうちに帰るぞ」

「うん。そうだね」

何も言えずに、わたしはただ立ち尽くす。


ねぇ彰吾、待って…。

松野さんにそこまでする必要があるの?

それって、彰吾の役目じゃない。向井くんの役目だよ?

好きな子に、そうする気持ちはわからなくもない。困っていたら助けたいと思うし、それが当たり前。

でも、松野さんには向井くんがいるんだよ?

…違う。そうじゃなくて。

何より言いたいのは、いくら好きじゃなくても彼女の前で、別の女の子を相合い傘して家送るだなんて…何、考えてるの?



相合い傘をする二人の後ろ姿は、幼なじみ同士なんかじゃない。

恋人同士にしか見えなかった…。