「ううん、私こそ。料理上手なんだね、凄く美味しかった」

松野さんは、嘘ついてない。


「私、あまり料理出来ないから羨ましいよ」

ついてないんだけど、お世辞にしか聞こえないのは、わたしは彰吾を好きで、彰吾は目の前の松野さんが好きだから。

だから、自然とそう聞こえてしまう。


焦った、自分の黒さに。


「そんなことないよ」

ニコニコ笑顔で話してるくせに、心の中は全く違うから。

どす黒い感情だけが沸き上がってくるから、自分でも焦った。