俺の腕の中に落ちたはずなのに…杏里は落ちていなかった。



俺の生き方には賛同出来ないらしい。



すべてに恵まれた人間なら…当然の考え方だ。
所詮、底辺の人間の心の闇なんて、上の人間は理解できない。



翌日、俺は杏里に退職願いを出した。



「会社…辞めるんですか??」



「…はい…」


「洋貴さん…私を捨てるんですか??」


杏里の二つの瞳には涙が溢れる。



「捨てたのは杏里の方だ…。こんな会社の社長になっても…罪を被せられるだけだ。今まで働いた分の金は要らない…」



「・・・」