櫂也は走る。



校舎の中、外庭、でも美桜の姿は見つからない。


「帰ったか……」



上がっている息を整えつつ、周りを見渡す。



「櫂也さま」



遠くに見える人影は、櫂也の記憶からすぐに出てくる人物だった。



「犬養さん…この間は、本当にすみませんでした……」



「いいえ。あなた様のおかげで、美桜さまが、夜唸っていることが分かりました…睡眠を二時間ほどしかしていないということも」