中に入ると懐かしい香りがした


「とりあえず俺の部屋に入ってて」



あたしはお店の奥の階段を上がってハルの部屋に入った



男とは思えない綺麗さ


ちょっと憎らしい



「酒でいい?」



後ろを振り返るとハルが居た





「うん



ってか久々ーー


でもあんまり変わんないね」



よく昔はここに直と泊ったな


「そーいえば直ちゃんは元気?


あんま会わねーし」




直のことを思い浮かばせる



直はきっと



あたしが自分から離れて行くって思ってるよね



だって


あたしこの頃


直に何も喋ってないし



ちゃんと喋らなきゃ


でも先生のことはあんま言いたくないしなーーーー



「あんまり無理して自分のこと話す必要ねーよ」




ベットに座って隣をポンポンと叩く



あたしは素直にそこへ座った



「どうゆう意味?」



「そのまんまだよ



無理に自分を出す必要ない



いくら大切な人にだって隠しておきたいことって


誰でもあるだろ


いつか話したくなる時が来る


直ちゃんはそれを待ってるよ



むしろ無理に話してほしくないんじゃないの」


あたしの頭をなでながら言う


「でもあたし

直にそんな辛い思いしてもらいたくない」




ハルはあたしの顔を覗き込むようにして言う




「どうして?


俺だったら無理やり言ってくるような言い方



されるほうがやだけど?」




ハルはベットに寝転んだ



あたしは黙り込んで直のことを考えていた


「そー言えば


お前さ下行ってバイトの練習しよーぜ



今度から下で働くんだろ?」




悩んでばっかのあたしを気にしてくれてるのかな



確かに悩んでばっかじゃね


「うん


お願いします」


「よっし


下行くぞ」



ハルは勢いよく起き上がった