不意に後から力強く抱きしめられて、
体が後へ揺らいだ。


「なにしてんの?」


耳元で貴方の声がする。
あたしは貴方と一緒に、この美しい月が見たくて、
明るく、声をつくってこたえる。

「ん、お月様。
満月だよ、綺麗……」


「ふーん……」


予想した通りの気のない返事。

「楽しそうやなぁ……
そんなにええか?
たかが月やん。」

貴方はそうつぶやきながら、
あたしの耳の縁をそっと、なぞる。


「……ちょっ…」

期待に膨らむ心と、二人の時間が行為に終わってしまう事への焦りとが入り交じる。

「ふふ、俺はこっちの方が楽しいなぁ……」

腰に回されていた腕が、服をまさぐる。



期待が心の隅にあるあたしは、

抵抗なんて、出来ない。





後はもう、貴方の嵐に飲まれた。