はっきり言ってこの男の人と出会った記憶は、今以外に、ない。
というか、こんな男がいたら、多分覚えている。だってとても美しいのだ。
今まで見た男の人たちより美しい。


「……人違い、じゃないですか?」

見上げないと、顔が見えない男に言う。首が痛い。
多分、人違いではないだろう。
真白なんて名字はあまりない。少なくともこの町にはいないだろう。
16年間、同じ名字にあったことはないから、断言できる。
けど、この男と会った記憶はない。


「そんなはずはない!君だ!……本当に憶えてないのか……小雪」

切なそうな声で、切なそうな瞳で私をとらえる。
そんな目で見ないで欲しい。

私はそっと目を逸らした。