「あーんなっ!」 手を振りながら名前を呼ぶが、 何の反応もない。 逆に、ギャラリーの女子達が手を振り返してきた。 「我偉くーん!」 「こっちにも手降ってぇっ!」 「杏那っ!」 その様子を見ていた杏那がフィッと顔を逸らしたのを見て、慌てて声を掛けるが、 またも女子達の声に掻き消され、彼女に聞こえることはなく‥ そのまま、我偉に背を向けて 人混みの中に消えていった。