夕暮れの神社で

そう言って、
男の子は一枚のお札を取り出した。お札にしては珍しい藤色だ。

「これを持ってろ」

男の子は、あみちゃんに藤色のお札を渡した。そして、目をつむると静かに何かを唱えはじめた。

「迷える憐れな魂よ、癒しの彩(いろ)と桜の導きのもとに旅立て」

何かの祝詞のようなそれを聞いていると、あみちゃんの体に変化が起こる。

「あっ…」

あみちゃんの体は、藤色のお札の放つ光りに包まれ始める。
そしてゆっくりと薄らぎ始める。

「おねえちゃん…」

お経…が続くなか、少し不安げに私を見るあみちゃん。でも私は感じていた。大丈夫だと。

「あみちゃん。大丈夫だよ」

優しく微笑むと、あみちゃんは安心したように頬を緩めた。

「おねえちゃん」

もうほとんど薄れている状態で、私に話しかける。

「なに?」

「あのね」

「彼の行く手に…」

「ありがとう」

「幸多からんことを」

その言葉を最後に、あみちゃんは光りになって、ふわっと消えた。