昼間なのに薄暗いこの森に、生き物の気配はなかった。
私とあみちゃんだけ。
木の根や藪を掻き分けて進むのは、高校に上がる今でもワクワクするものだ。
あみちゃんは、浴衣を着ているにも関わらず、服を汚すことなく進んでいく。ぴょんぴょんゆくその姿は、森の妖精のようだ。

「あみちゃんは、よくこの森に来るの?」

「うん、ここはね、あみの思い出の場所なんだ」

「そうなの?」

「うん!今からそこに案内してあげる!」

どうやら、目的もなくさ迷っているのではなく、目的地はあるらしい。

私達はさらに進んでいった。