八重町は、その名前にもあるように、八重桜がとても綺麗な町だ。
都会でもなく、田舎でもない。何と言うかインパクトのない町ではあるが、桜の美しさに関しては来た時から群を抜いて素晴らしいと思っていた。


「ふぅ…荷物も大分すっきりしてきた」

私は、六畳間のアパートで段ボールの中身を部屋に配置していた。
洋服をタンスにしまったり、ぬいぐるみを飾ったり…。

「あっ…」

取り出した物の中に、一つの写真立てがあった。
そこに写るのは、幼い私と両親。

「………」