「兄さんはッ…兄貴失格なんかじゃないッ!!!俺のこと思って…あんな態度とったんだろ?俺が大好きな優しい兄さんをッ、許さないわけないだろ…」
泣きながらも、隼ははっきり絖稀に気持ちを伝えた
『絖稀…自分の大切なものは、自分の手で守れ。絶対に突き放したりするな。』
「あぁ…海里もすまなかった。」
真っ直ぐに絖稀を見ながら言うと、それに優しく微笑みながら答えた
笑いあう2人の顔は、どちらも輝いて見えた
俺の周りには…心が綺麗な人がいっぱい居る
『まぁ、あとは2人でゆっくり話せ。俺は眠いから帰る。』
「海里さん、ありがとう。」
そんな声を聞きながら、屋上をあとにした
〈絖稀 SIDE〉
俺と隼は、海里が出て行った扉を見つめていた
「海里さんは…凄い不思議な人だよね。海里さんの言葉は、心に直接響くような…そんな感じがする。」
隼は扉から、目を離さないまま口を開いた
『あぁ…そうだな。海里は、どんなに心を閉ざしているときでも、すんなり入ってくる。』
海里…俺はお前に一度会ったことがあるんだ
朝、屋上で会ったとき、まさかと思ったよ…
銀色の髪に、銀色の瞳…
だが、まだちゃんとした確信はなかった
俺達が、前に会ったときはまだ中学2年だったから
でも…さっきの言葉で確信した
