最強で最高だったあいつ

「ハア…確かに母親失格ね…」

隼の母親は力なく笑った


「隼…今まで本当にごめんなさい。許してほしいなんて、言わないわ。」

隼は、俺から少し離れ、涙を流しながら母親を見ていた

「私はストレスが溜まると、いつも隼にストレスを全てぶつけてた。成長するにつれて、隼は力も強くなって私に反抗も出来たはずなのに、一切反抗しなかった。」


隼は母親の話しを聞きながら、唇から血が出るくらい噛んでいた

俺は隼が唇を噛まないように
唇の間に親指をあてた

すると隼は噛まなくなり、俺のシャツを握り締めていた




『…隼が、あなたに反抗しなかったのは、昔の優しかったあなたに戻ってくれると、信じていたからじゃないですか?』


俺が話しを遮り言うと、隼は驚いた顔をしていた

「な…んで?どうして、俺が思っていたことがわかるの?」

『隼の瞳を、見ればわかるよ。本当に嫌いなら、門限守ったりしないだろ?それに、抵抗だって出来たはずだ。』


優しく微笑んで、隼の瞳を真っ直ぐ見て言った


「そ…んな…。ごめんなさい…ごめんなさい、隼…」

俺達の会話を聞いていたのだろう


口元に手をあて、涙を流しながら隼に謝っていた




『隼、行ってあげな。ゆっくりでいいから…抱きしめてあげな。』

俺が耳元で呟くと、小さく頷きゆっくり母親の方に歩いて行った


そして、隼がゆっくり母親を抱きしめてあげると、母親は一瞬ビクッとなったが、抱きしめ返していた



俺はそのとき、2人が流している涙を綺麗だと思った


俺がそのまま帰ろうと、歩き出すと隼に呼ばれた

「海里さんッ!!!」

『ん?』

振り返り、優しく笑うと

「「ありがとうございました。」」

2人がお礼を言ってきた