コンパスで作る地球




言ってしまった言葉は消えない。後戻りはできない。だから相手を傷つけないように言葉を考えて使おうね。


幼稚園児が先生に習う言葉。


「…。」


そんなことも忘れてしまっていた私。バカ?


尾田クンの目の様子がまた変わった。さっきの目ともその前の目とも違う。目が灰色になっていた。


私の言った言葉により重苦しい沈黙が流れる。私は焦点があわせられず辺りをキョロキョロする。


尾田クンの顔つきも変わってる。その後は下をむいて前髪のせいで顔の半分が隠れた。


何を思ってるの?私のことどう思ってる?心も顔もブスだとか酷いこと思ってる?別に良いよ……違う。しょうがないよ。自業自得だよね。


ゴメンって言葉。どうして素直に言えないんだろう。


口が凄く固くなる。唾を飲むことさえ緊張する。


何もしゃべらないまま尾田クンが階段を上っていった。


「あッ……」


「……こんな所にずっといたら朝のホームルーム遅れるぞ。それに…ほかの生徒にも迷惑かかるし。」


「そーだよね……」


尾田クンはそれだけ言うと再び1人で階段を上り始めて廊下に出ていった。


その廊下でほかのクラスの友達らしき人ともうじゃれている後ろ姿が見えた。